群青とセピア

夕泳と申します。作品のこういうところが美しい!ということを語ります。基本的にネタバレあり。コメントご自由にどうぞ(^^)d

狂気

 

 

私は、自信を持って「 何事にも感謝! 」と言って人生を突き進んでいる人より、

「 おかしいな、自分狂ってんじゃないか 」と内省しながら生きている人の方が面倒くさそうだけど、悲しいことに共感できる。

 

非常に悲しいことに私は「 何事にも感謝! 」の " 何事にも " と " 感謝! " の間に

 

息を吐くごとに罪を犯している私ごときが、感謝などおこがましいこととと存ずるが、それでも神が( 私は無神論者ですが、あえて神と書く )私を愛するので、愛せざるをえない。その意味で

 

という注釈が入る。

 

 

今日読了した、アンナ・カヴァンの「 氷 」

は、残念ながら私にはあまり合わなかった。

 

氷 (ちくま文庫)

 

この本を選んだのは、

シモーヌ・ヴェイユやヴァイオレット( ヴァイオレット・エヴァーガーデン )のような傷付きやすく、傷付けやすい、ウニのような刺で囲われている、純粋な女性が主人公の物語を読みたいと思ったから。

加えてヴァイオレット・エヴァーガーデンのギルベルト少佐とその兄のように、恐らく実は1人の人格が別れて2人になった男性とヴァイオレットのような純粋な女性の、アニマとアニムスの闘いの物語を読みたかったからだ。

 

アンナ・カヴァン作「 氷 」を読んで

目的は達せられたし、予想通りのものは得られた。が、それ以上のものではなかった。

 

しかしこの小説を読んで収穫が完全に無かったわけではない。

まず、この物語のおかげで、ユングのいう「 女性にとってのアニムスは複数人 」、「 男性にとってのアニマは1人だけ 」という意味がなんとなくわかってきた気がする。

 

また、これを読む前に読んでいた、シモーヌ・ヴェイユの「 重力と恩寵 」の表紙にある、宝石のようなものの正体が偶然にも「 氷 」に登場したので判明した。


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月長石( げっちょうせき )、別称ムーンストーンというらしい。

 

 

しかし何が自分に合わなかったのか。

書いていることの大半は共感できる。夢と現実が混ざっている感じもGJだった。
けれど罪の意識があまりない。自分が狂っていくのに歯止めが効かず、ほとんど反省せず、その意味では苦しまない。
外界からの攻撃にもがいたり、壮絶な寒さや痛みに耐えたり、少女に対する罪の意識は俄にはあるが、それ以外に狂っていくことの辛さや周りとの落差というものが感じられない。はじめから自分の狂乱に陶酔しきっている。はじめからフィーバー。

そういう文学だから仕方がないのだが。

カフカとか読めないな私。

 

こういう「 狂気 」を描く作品は
個人的には主人公がじわじわと「 おかしいな 」と思いながら少しずつずつズレていくものの方が共感しやすいのかもしれない。

「 狂気 」を文学にするなら、内省する苦しみを書いてほしい……

「 狂気 」は「 純粋さ 」と紙一重なのではないのか……