群青とセピア

夕泳と申します。作品のこういうところが美しい!ということを語ります。基本的にネタバレあり。コメントご自由にどうぞ(^^)d

ロスト・コントロール ~虚無仮説~  

 

 

久しぶりにBL小説を読んだ。

台湾の作者による台湾Bl、

「 ロスト・コントロール

 

ロスト・コントロール -虚無仮説1- (Daria Series)

 

ジャンルは海外もの(翻訳BL)、

心理サスペンス、トラウマ、バディもの。

 

舞台はFBI。相棒同士の藍とハイエルが、それぞれの辛い過去を彷彿とさせる事件が多発し、自分自身と向き合わざるを得ない事態に追い詰められていく。

それらを通してお互いの心や関係性が変化していく物語。

 

" ハンニバル "や" Detroit Become Human"などの心理描写が綿密なストーリーを好む(BL耐性のある)方におすすめ。

 

 

今回読んでいて、今はかなり薄められてしまったのかもしれないが(BLドラマとかアニメとか結構増えた)、

元祖BLとは" 女性のアニムスを癒す "ジャンルだったことを思い出した。

 

私自身は5、6年前にClamp作品の洗礼を受けてBL界に迷い込んだので

まだまだ新参者なのだが、元祖腐女子大先生たちが語っていることと私の憶測をまとめると、そのようである。

 

※ここからはますます私の憶測が濃くなるのでご注意を。

 

元祖Blは" 耽美 "や" JUNE "と表されることもあり、

その特徴のひとつとして

主人公が母親コンプレックスを持っていることが挙げられる。

 

主人公は

母親が何らかの問題で時期尚早に亡くなっているか、アル中やヒステリックなどで

" 母親としての役割を果たさない(果たせない) "

母親を持つ。

これにより主人公である少年は抑圧されたエネルギーが同性愛へ向いてしまう傾向にある。

母親コンプレックスは総じて女性コンプレックスへと繋がる。

 

このような母親コンプレックスを持つ主人公は

母親のようになりたくない but 無意識に母親のような行動をとってしまう

という葛藤と物語の中で向き合わざるを得なくなっていく。

そこにセクシャルな問題を絡めたのが元祖BLの特徴のひとつである(ギリシア少年愛など、他にも複雑な成り立ちがあるのだがそこはまだまだ勉強中なので割愛 )。

 

私は、恋愛とは場合によっては人間関係の究極の関係であり、

サド(sadistic)/マゾ(masochistic)の究極系だと思っている(これが厄介な方へいった場合が世間ではイジメと称されるものになる)。

 

「 ロスト・コントロール 」における

藍(受)は母親に関する辛い過去があり、

支配力のある相手を好み、自分を辛い状況へ持っていく傾向がある(マゾ)。

対してハイエル(攻)は、相手をコントロールしたい傾向のある人物(サド)。

 

さて、母親コンプレックスを持つ藍にとって救いだったことは

母親が複数人いたことだ。

・実母

・サム(自殺するまで藍と実母を支えた女性)

・メアリー(養母)

 

母親が複数人いるというモチーフは神話学や比較宗教学で多く見られ、特に人間の親と神の親の二人の母を持つというモチーフで表される。

 

複数の母親を持つことは

母親コンプレックスを持ちやすい傾向にある運命を背負った子が、健全に育つ上で特に重要な事柄であったりする。

 

母親が複数いることで名前が変わったり、環境が変わったり、もちろん対人も変わるので、そのおかげで子は二度生まれることができるのだ。

 

ロスト・コントロール -虚無仮説2- (Daria Series)

 

終章のイアン(主治医)と藍の単語ゲームの会話が印象的だ。

 

「 君はすごいと思ってたよ。君って、スペルをミスるどころか自分の不利益になりそうな単語は今まで一つとして使ったことがないんだぞ 」

「 今は使える単語が四つ増えたよ 」

「 言ってみて 」

「 Suicidal( 自殺傾向 )、Evade( 忌避 )、Resist( 抗う )、それからFree( 自由 )。この四つが俺の人生だよ 」

「 そうやって、君は自由になったんだね 」

 

 

事件を通して過去と向き合うことで

周りから" 自殺願望がある "と決めつけられている気がするのと、自分の心と向き合いたくないのとでカウンセリングが苦手だった藍は、

ボロボロに崩れそうになっている砦を維持することよりも、いっそ全てを壊して新しく生まれ変わろうと気持ちを変化させる。

 

自分自身を傷つけようとすることは、もう一度やり直そうとする心の現れだったのだと認めることができたのだ。

 

 

最後に

四つの単語の頭文字は

S.E.R.F

農奴、奴隷のような人

 

 

 

 

 

Souffle Ocoeur