群青とセピア

夕泳と申します。作品のこういうところが美しい!ということを語ります。基本的にネタバレあり。コメントご自由にどうぞ(^^)d

秘密の花園

 

 

こんにちは。夕泳です。

いきなりですが新卒で入った会社を辞めました(^q^)。

社会人になってから会社を辞めるまでの1ヶ月半(事が起こって2ヶ月たちましたが)、嵐のように色々なことがありました_(:3」 ∠)_。

 

さて今日はそんな目まぐるしい日々を送りながら少しずつ読み進めていた児童書の感想を書きたいと思います。

バーネット著『秘密の花園についてです。

 

秘密の花園 (福音館古典童話シリーズ)

 

仕事が始まってから間もなく、私はなんとなく自分がこれから(仕事を通じて)メリーと似たような体験(心の変化)をするだろうと無意識に直感し(以前に2度ほど読了済みの)この本を手に取りました。あとは職場の大人たちや社会に散々汚されてしまった心を癒すために私にとって、この本は一つの心の救いでもあったのです(笑)。

 

 

 

 

◎どんな本?

秘密の花園』は、経済的に豊か(インドの上流階級)な家柄ではあるが、子どもに興味のない両親のもとに生まれ、愛情が充分に与えられずワガママでヒステリックなお嬢さんに育ってしまったメリーが、突然伝染病で両親を亡くし、国籍など環境のまったく異なる親戚の叔父さん(クレーブン氏)のお屋敷へ預けられるというところから始まります。

メリーはお屋敷で出会う人々や環境の変化、自然との関わりなどを通して自分自身と向き合い、本来の自分を取り戻していきます。

秘密の花園』はメリーのように、子供時代に得られるものが何か欠けていたり、過去のトラウマによって心を閉ざしてしまった人々の心を癒していくその過程を美しい情景描写や対照的な表現などを用い、心理的な視点から描く物語でもあります。

 

 

 

◎登場人物…大きく2つに分けられます。

・メリー…コリンと似た存在(愛情に飢えた人であったが、コリンと出会う前に環境の変化や人との関わりで少しだけ本来のメリーに戻りつつある状態)。

 

・ディッコン…健全で心が豊か。

 

 ➡上の2人は鬱の人を鬱から抜け出す(心を癒す)手伝いをする役割をもっています。

 

 

・クレーブン氏…過去のトラウマで心を閉ざした人

 

・コリン…クレーブン氏の一番のコンプレックス。愛情に飢えている人。(クレーブン氏と別人格であるとも言える)

 

・ベン…庭師。クレーブン氏の心の門番のような存在。心の管理人。

 

 ➡この3人は同一人物(クレーブン氏が主体で残りの2名はクレーブン氏を分裂させた人物だともいえる)。この物語では救われる側の役割をもつ

 

 

 

◎物語における庭

秘密の花園』におけるメリーたちの秘密の庭は、精神世界をも意味しています。また、お屋敷も心の領域だと考えて良いでしょう。

秘密の庭で起きている出来事は主に、クレーブン氏、コリン、ベンの心で共通して起こっていると考えて良いでしょう。もちろん庭に関わるメリーやディッコンの心にも同時に影響を与えています。

 

メリーが見つける『隠された庭』はクレーブン氏の閉ざされた心を意味しています。

枯れはて、死んでいるような状態の10年間放置されたこの庭は、クレーブン氏が庭で妻を失い(過去のトラウマ)、心に鍵をかけてから10年間うつ状態から立ち直っていない状況を表しています。

 

また、庭師のベンはクレーブン氏の心の門番(管理人)のような存在でしょう。これは、

・ベンは誰も入ることのできなかった秘密の庭に1年に一度バラの手入れに入っていた。

・メリーがクレーブン氏の心の深層(秘密の庭)に入る(=クレーブン氏の心を覗く)前にベンと対面する。

ことからも言えることです。

 

うつ状態の人の心の深層を覗くには多少のテクニックと忍耐力などが求められます。

メリーはこの難関を、純粋な好奇心や子どもっぽさ、同じ辛い体験をしていること(共通項)などでやすやすと通り抜けます。

 

庭に入る手がかりは他に様々な要因がありますが、特に重要なのは『コマドリ』です。

このコマドリクレーブン氏の本質的な良さ(本来のクレーブン氏)、クレーブン氏の美しいところを表しています。

メリーはクレーブン氏の本質的なものを見抜く力がありました。

メリーがコマドリと友達になることは、同時にクレーブン氏の心の警戒心を解くことでもあるといえます。

メリーがコマドリと仲良くしているところを見たベンはやっと、この子になら心を開いていいかもしれないと思えるようになるのです。

 

10年間放置され、死んだような庭を見たメリーは、『死んでいるように見えるけれど死んでいないかもしれない』『草も伸び放題だけど自然なこの雰囲気もとても美しい』というように受けとります。そしてこの庭をいつか生き返らせようと、ちゃっかり自分の秘密の居場所にしてしまうのです。

 

コマドリと仲良くなれ、死に果てる寸前の庭を生き返らせようと考えたメリーは、うつ状態のクレーブン氏の心に癒しを与えられる人間に値する(そういうエネルギーがある)といえます。

 

話は逸れますけど私もメリーのようになれるかな?なれたらいいな?とちょっと心の片隅で思っているところです。どうなるか分かりませんし、今は絶賛、人に何かを与える側になる精神状態でもないのでなに考えているんだ??自分??って感じですけど( ̄▽ ̄)=3

 

 

 

 

◎バラの木

秘密の庭のバラの木は、クレーブン氏の心に残った最後の希望、大事なものの象徴です。

バラの木を枯らさないよう、ギリギリのエネルギーを使って庭師のベンは1年に一度バラの手入れをしていました。このバラの木がクレーブン氏のひとすじの光になり、弱々しくも10年間生き続けてきたのです。

しかし庭師ベンも歳も歳、リューマチにかかり、年に一度のバラの手入れもままならなくなっていました。これは人生の時間切れが迫っていることを意味しています。

 

 

◎ショック療法

メリーは秘密の庭を整備している途中でコリンと出会います。

コリンはクレーブン氏のトラウマの根元(負の記憶、ネガティブなこと)であり、心(お屋敷)の奥底(分かりにくいところ)に閉じ込めている存在です。

 コリンは親からの愛情を充分に与えられなかったことや外に出ることを拒否していたことで、様々な情報から遠ざかることによりメリーと同じく、わがままでヒステリックな王様に育ってしまいます。

コリンの気にしている『せむし』は外部でささやかれる噂や病弱体質が後押しした、想像力で膨れ上がったネガティブなものの象徴です。

 

周りも知っていて自分も知ってはいるけれど手に負えきれない状態でどのようにしてこれを乗り越えればよいのか。

こういうときこそ荒治療だぜ☆(^^)

そう、そこでバーネットが用意したのは誰であろう

メリーです!!!!きゃあああ!!!!

同世代の似た者同士(メリーとコリン)を鉢合わせる→お互いを外側から見つめる→自分自身を客観視する

…というショック療法を行い、コリンが不毛な負のスパイラルから抜け出すきっかけを与えているのです。

 

 

 

 

◎外界との繋がり

一度心を閉ざした人に言葉で分からせようとしても伝わらないし、相手はますます警戒して自分の世界に籠るでしょう。

重要なのは相手をその気にさせることです。

自分の世界で負の想像力ばかり膨らませるコリンを外界に連れ出す(秘密の庭に誘う)手立てとして、メリーは庭の持つ『秘密』性を利用します。

子どもというのは元来、わくわくすることが好きですから。

 

 

 

 

◎ディッコン

ディッコンはメリーとコリンの2人のそばにいるお手本となる人です。2人に良い影響を与えてくれる存在として描かれています。

ちなみに、作者は故意にディッコン(経済的に貧しいが心は豊か)を、2人(経済的に豊かであるが心が満たされていない)と対照的に描くことで、はっきりした印象を持たせています。

 

 

 

 

◎自然と関わる

メリーやコリン、ディッコンたちの庭での作業は3人の心を豊かにさせ、またこれらはクレーブン氏の深層心理と繋がっており、クレーブン氏の心に癒しを与えていること(エネルギーを貯めていること)をも意味します。

 

 

 

 

◎魔法とは

秘密の花園』で言われる魔法とは、簡潔に表してしまうと、自分自身にプラスの言葉を囁き続けることです。

なんだか、言葉にすると味もへったくれもない自己啓発みたいになってしまいますね…( ´_ゝ`)。

 

これは本文では『バラを咲かせりゃアザミは生えぬ』と表現しているように、脳科学で裏付けされることでもあります。

"嫌な考えだの、がっかりするようなことが心の中に入り込んだとき、その代わりに何か気持ちの良い、勇気のわいてくるようなことを思い出したり考えたりしてみさえすれば、もっと驚くようなことがだれにでもできるのです。ひとつの場所にふたつのものはおさまらないのですから。"

 

脳は、ひとつの質問を投げ掛けると、その答えが出るまでいつまでも考え続ける構造になっているらしいのです。

 

 

 

 

◎長い休息

この本の終盤に、クレーブン氏が心を閉ざしてから目覚めるまでの長い休息期間を描いている文がありますが、実はこの部分がサイコキャッツがいちばん好きな描写です。

何故なら私もよく分かるからです。私も長い休息期間を経ました。とても美しい文で、本質に近いと思います。

心を閉ざし、感覚をほとんど失った人にとっては必要なことなのです。

 

 

 

 

◎まとめ

さて、ここまで誰得?と思うくらい細かく物語を紐解いてきましたが…言ってることはすごく当たり前で、一歩間違えると自己啓発に陥りそうですね…(笑)。

 

言葉で言えないことだから物語るのです。

ここに紹介していない美しい表現が沢山ちりばめられています。情景描写も無駄のない整頓された、それでいて趣のある文です。

バーネットは心とか感情、繊細さ、あたたかさ、優しさ等を大事にした描写をする人なんだろうなあ。

 

私は最近、目に見えないものはこの世にあると思うのですが、別にそれはスピリチュアル的なことでもなく、単純に、自分が理解できていなければ自分の中の精神世界に存在しないので、見えないのと同じことだということです。

見ようとすれば見えるようになるし、気づこうとすれば気づけるので、

メリーがコマドリの声を聞いたのはメリーがそれを聞こうとしたからで、メリーがコリンの泣き声を聞き、それが気になったのはメリーが気づこうとしたから。

 

クレーブン氏は不思議な声(亡くなった妻の声)を聞き、庭へ向かうと、丈夫になった息子と会います。

聞こえないはずのものが聞こえてくる

見えなかったものが見えてくる

物語のハッピーエンドは

魔法を続けていれば叶うことなのでしょう。

 

いつかきっとね。